パフォーマンス

私はこの企画で「バルーンの部屋」と「パフォーマンス」をしたいと考えていた。
「パフォーマンス」といっても親子を集めて一緒にペンシルバルーンを作ろうという簡単なワークショップ形式のものだ。
まるで素人なので作れるバルーンも一番簡単な「犬」だけだったが、それなら子供もすぐ作れるし、初めて作ったときは結構達成感が生まれるので「犬」をつくることにした。
問題はそれをどうやって一緒につくるかだ。
私はまず、パフォーマンス=踊ったりマイムをしたりする、ことでお客さんの興味をひけるかと思ったのでなにか短い踊りを考える予定だった。
それから、いざ一緒につくるというときも、あるルールをつくってパフォーマンスのようにしたかった。そのルールとは「しゃべらない」ことである。
バルーンも白黒、ダンボールも白黒なので、モノクロの画像で音声がなかった時代の映画のようにしたいと思ったのである。
「しゃべらない」のでつくり方を説明するときは、画用紙に字を書いてみせる。大きくジェスチャーをすればなんとか伝わるのではないかと考えていた。


そこまで考えていたのはよかったのだが、ダンボールの準備に追われ、パフォーマンスはそっちのけになってしまった。
短い踊りもなにも練習していない。結局、踊ることはやめることにした。
「しゃべらない」ことはやってみようと思っていたので、スケッチブックに説明用の文章を書いた。


「みなさん、こんにちわー!!」
「今日は『バルーンワークショップ』に来てくれてありがとう!」
「今日はある動物をバルーンで作ってみたいと思います。」
「まず・・・」
「この動物は何かな??」
「× ブー!!」
「○ ピンポーン!」
「では、みんなで『イヌ』をつくってみましょう。」
「1、風船をふくらませます。」
「2、あたまをつくります。」
「3、ねじって、ねじって、ねじって・・・」
「4、次は前足を作ります。」
「5、後ろ足も同じ。」
「6、ハイ!出来上がり」
「さあ、みんなで作ってみましょー!!」
「うまくできたかな?」
「作ったイヌさんはお家につれて帰ってあげてね!」
「今日はきてくれてどうもありがとう!」
「これで『バルーンワークショップ』はおしまいです。」
「『バルーム』にも遊びにきてね!」
このような文章をスケッチブックに書き、1枚ずつめくって進められるようにした。
それから、「準備中」「どんまい」「拍手」というページも作ってみた。


「バルーム」とはダンボールの部屋のことである。この文章を考えていたときに思いついた。
「バルーン(Balloon)」と「ルーム(Room)」をかけて、「バルーム(Baroom)」とした。単にスペルを間違えているように見えるという話もあったが、このときからダンボールの部屋ではなく、「Baroom」とすることにした。


スケッチブックは用意したもののそれを練習する時間は全くなかった。それでもまだ、即興でなんとかなるかもしれないなどと、あきらめきれず何にも練習しないまま、当日をむかえることになる。


案の定、パフォーマンスは失敗だった。以前、先生のいっていた、イメージ不足、準備不足その通りだった。
「しゃべらない」というルールもどこへやら。考えていたようなことは何もすることができなかった。
自分がいけないのだが、悔しかったのでいつかリベンジしてやってみたいと思っている。今でも。